【基礎情報】
分類: マメ科ダイズ属(Fabaceae・Glycine)
学名: Glycine soja
原産: 東アジア(日本・中国・朝鮮半島に広く分布)
生育環境: 草地、河川敷、農地周辺、藪の縁
草丈: 40〜120cm(つる状)
葉: 三小葉、薄く小型、細毛が多い
花: 白〜淡紫、夏に開花
莢: 細く小型、裂莢性が強い
種子: 非常に小粒(大豆の1/3以下)、褐色〜黒褐色
利用: 食用利用はほぼないが、栽培ダイズの原種として重要
畦道の草に寄り添い、風に揺れながら伸びるつる。
ツルマメは、目立たないけれど確かな存在感を持つ野生のマメだ。
栽培される大豆の“元の姿”ともいえるこの植物には、
野の時間を生きてきた気配がそのまま残っている。
🕊️ 目次
📜 野生に残る姿 ― つると小さな葉
ツルマメの最大の特徴は、その名の通りつる状に伸びる茎だ。
周囲の草に絡まりながら空を目指し、
光が少ない場所でもわずかな隙間を探して成長する。
葉は大豆よりも小さく薄い。
細い毛に覆われ、風を受けると柔らかく震え、
野生植物らしい軽さとしなやかさを見せる。
どんな環境にも必ず“揺れる余白”があり、
ツルマメはその中で静かに生き続けている。
🌿 ツルマメの実り ― 小粒が語る原型
ツルマメの莢は細く小さく、裂莢性が強い。
乾燥すると自然にはじけて種を飛ばすため、
種子は大豆のように大きくは太らない。
豆は黒褐色の小さな粒。
その小ささこそが、大豆がたどってきた道の“始まり”を示す。
野生の世界では、大きさよりも生き延びることが優先される。
ツルマメの粒は、その価値観のままに実っている。
🧬 大豆との距離 ― 近くて遠い“原種”
ツルマメと栽培大豆の距離は、広いようでいて、じつはとても近い。
遺伝子解析でも共通点が多く、
両者は“ほぼ同じ種”といっていいほどだ。
ただし大きく違うのは、人に選ばれたかどうか。
大豆は、大粒で収量が多く、裂莢しにくい株が選ばれ続けてきた。
ツルマメは、野生のまま環境に合わせて生き残ってきた。
そこにあるのは、どちらが良い・悪いではなく、
野生と栽培という“生き方”の違いだ。
🌙 詩的一行
草の影で揺れる小さな粒に、野の時間が静かに残っている。
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