毒のない世界に、美しさはあるだろうか。
分類:哲学・環境・文明論
対象種例:すべての毒きのこ(象徴的扱い)
分布:人間社会・都市・管理された自然環境
関連分野:環境思想、文明批評、生態倫理
主要モチーフ:安全・排除・無菌・退屈
扱い:自然制御の限界・「危険を除く」ことの喪失
人は、危険を取り除きたがる。
毒きのこを駆除し、
除草剤を撒き、
虫を殺し、
森を“安全な公園”に変えていく。
それは善意であり、恐れでもある。
だが、森にとっての安全は、
人にとっての安全とは違う。
🌿 無毒の森の静けさ
すべての毒を取り除いた森を想像してみよう。
そこでは、捕食も競争もなく、
緊張のない時間が流れる。
静かで、美しく、そして――死んでいる。
毒のない森は、
命の張りつめたバランスを失う。
毒とは、森が呼吸するための“張力”なのだ。
🌲 危険のない世界
人もまた、
危険のない場所で退化していく。
間違えることも、
選ぶことも、
恐れることもなくなれば、
心の感覚は鈍り、
世界の輪郭は薄れていく。
毒を排除するとは、
世界を鈍くすること。
🕯 安全という幻想
安全は、心を守るための仮面だ。
完全な安全など存在しない。
それでも人はそれを夢見る。
だが、毒を恐れるという感情の中にこそ、
命を感じ取る力がある。
森の毒は、生きていることの“証拠”だ。
恐れがある限り、
私たちはまだ、生の真ん中にいる。
✨詩的一行
毒を失くせば、
世界は息をしなくなる。

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