🎐 タケ2:進化と分類 ― イネ科タケ亜科の多様性 ―

タケシリーズ

タケは、森に立つ姿から「木」と誤解されてきた。太く、高く、節を重ねるその形は、確かに樹木に似ている。しかし系統をたどると、タケは木とはまったく別の道を歩んできた植物だ。

タケはイネ科(Poaceae)タケ亜科に属する。稲や麦、ススキと同じ一族であり、木本植物ではなく草本植物である。この分類上の事実は、タケの成長の速さ、寿命、繁殖のしかたを理解する鍵になる。

長い進化の中で、タケ亜科の植物は「一年で枯れる草」でもなく、「年輪を重ねる木」でもない、独特の生き方を選び取ってきた。その結果生まれたのが、地下でつながり、時を溜め、ある瞬間に一斉に伸びるという戦略である。

🎐目次

🌿 1. タケはどこから来たのか ― イネ科の進化の中で

イネ科植物は、恐竜時代の終わりごろから急速に広がったと考えられている。乾燥や寒冷にも耐え、短期間で世代交代できることが、進化上の強みだった。

  • 起源:約6000万年前以降。
  • 祖先:小型の草本植物。
  • 拡散:大陸規模で急速に分布拡大。

その中で、タケ亜科は「長く生きる草」という方向に進化した。地上部は短命でも、地下茎を通して個体全体は何十年、何百年と存続する。この発想は、草と木の中間に見えるタケの正体をよく表している。

🧬 2. タケ亜科の特徴 ― 草であり続ける理由

タケ亜科の最大の特徴は、木質化しないことにある。幹のように見える稈は、あくまで草の茎だ。

  • 年輪:形成されない。
  • 成長:伸びきった後は太くならない。
  • 構造:中空で軽量。
  • 維管束:茎内に散在。

この構造により、タケは短期間で高さを確保できる。硬さで支えるのではなく、しなりと節で風を受け流す。この性質が、台風や豪雨の多い地域で生き残る助けになった。

🌱 3. タケ・ササ・バンブー ― 分類の整理

日常的にはすべて「竹」と呼ばれるが、分類上はいくつかのグループに分けられる。

  • タケ類:モウソウチク・マダケなど。大型で稈が直立。
  • ササ類:クマザサなど。低木状で葉が大きい。
  • 熱帯性バンブー:巨大化・つる性を含む。

これらはすべてタケ亜科に含まれるが、生育環境や形態は大きく異なる。特にササ類は寒冷地への適応を進め、雪圧に耐える低い姿を選んだ。

🔎 4. 開花と枯死 ― 極端な進化戦略

タケを特徴づける現象のひとつが、一斉開花である。

  • 周期:数十年〜120年以上。
  • 特徴:同一クローンが同時に開花。
  • 結果:結実後に枯死。

この戦略は、捕食者に種子を食べ尽くされないためのものと考えられている。長く溜めた時間を、たった一度の繁殖に使い切る。タケ亜科は、効率ではなく確率を選んだ植物だ。

🌙 詩的一行

草のままでいることを、タケはあきらめなかった。

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