🎐 ヤギ12:毛用種 ― 繊維をまとうヤギたち ―

寒風の吹く高地で、ヤギは体を大きく見せる。筋肉ではなく、毛によって。長く、細く、密な繊維が、冷えと乾燥から体を守っている。

毛用ヤギは、肉や乳ではなく、体毛そのものを資源として利用されてきた存在だ。カシミヤヤギとアンゴラヤギは、その代表例である。

毛を得るという目的は、ヤギの体の外側に注目した改良だった。そこには、寒冷地と人の衣生活が重なった歴史がある。

📌 図鑑基礎情報

  • 分類:偶蹄目 / ウシ科 / ヤギ属
  • 代表品種:カシミヤヤギ、アンゴラヤギ
  • 学名:Capra hircus
  • 原産:中央アジア(カシミヤ)、トルコ(アンゴラ)
  • 体高:約60〜80cm
  • 体重:雌30〜50kg/雄40〜70kg
  • 用途:毛用(カシミヤ・モヘア)
  • 被毛:細く長い繊維を持つ
  • 性質:比較的おとなしい
  • 飼育環境:寒冷・乾燥地帯
  • 寿命:飼育下で10〜12年程度

🎐目次

🌿 1. 毛用ヤギとは何か ― 体毛を資源とする発想

毛用ヤギは、寒冷地で生きるために発達した被毛を、人が衣料として利用した結果生まれた。

  • 目的:保温性の高い繊維の獲得。
  • 特徴:細く、長く、柔らかい毛。
  • 改良:毛質と量を重視。
  • 結果:衣生活との結びつき。

肉や乳と異なり、毛は体を傷つけずに得られる資源でもあった。

🧶 2. カシミヤヤギ ― 極細繊維の起源

カシミヤヤギは、厳寒の高地で育つ。冬毛の下に生える産毛が、カシミヤ繊維になる。

  • 繊維:非常に細く柔らかい。
  • 採取:春の換毛期に櫛ですく。
  • 量:1頭あたり少量。
  • 価値:希少性が高い。

寒さに耐えるための毛が、人にとっては贅沢な素材になった。

🧵 3. アンゴラヤギ ― モヘアを生む体

アンゴラヤギは、長く光沢のある毛を持つ。これがモヘアとして利用される。

  • 毛質:太めで弾力がある。
  • 外見:全身を覆う長毛。
  • 管理:定期的な剪毛が必要。
  • 利用:衣料・装飾品。

被毛の存在感そのものが、品種の特徴になっている。

👕 4. 人の暮らしとの関係 ― 衣服と交易

毛用ヤギは、遊牧と交易の歴史と深く結びついてきた。

  • 地域:中央アジア・中東。
  • 用途:衣服・敷物。
  • 交易:長距離交易の品目。
  • 現在:高級繊維として流通。

寒さを防ぐための毛は、やがて世界を巡る商品になった。

🌙 詩的一行

風を防ぐために生えた毛が、人の体をも包んでいる。

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