もしネズミが人間を観察するとしたら、どんな生き物に見えるだろう。昼と夜で振る舞いを変え、物をため込み、捨て、また作り直す。突然環境を変え、危険を生み、同時に餌と隠れ場所も増やす。不安定で、だが規模の大きな存在。
ネズミは、人を理解しようとはしない。ただ、人の動きに合わせて振る舞いを変える。その距離感の取り方こそが、ネズミという生き物の完成形なのかもしれない。
🎐目次
👀 1. 変化し続ける存在としての人間
ネズミにとって、人間は予測しにくい存在だ。昨日まで通れた道が塞がれ、なかった建物が突然現れる。音、光、匂いが頻繁に変わる。
ネズミは、この不確実さを避けない。むしろ前提として受け入れる。変化が起きる場所には、新しい隙間が生まれることを知っているからだ。
🏗️ 2. 危険と資源を同時につくる生き物
人間は、ネズミにとって矛盾した存在である。罠を仕掛け、排除しようとする一方で、餌と住処を増やし続ける。
廃棄物、倉庫、配管、建物の隙間。これらは意図せず生まれた資源だ。ネズミは善悪を判断しない。ただ利用できるかどうかを見る。
🚶 3. 近づきすぎず、離れすぎず
ネズミは、人の正面には立たない。視線の外、音の届きにくい場所を選ぶ。完全に離れれば資源は得られない。近づきすぎれば危険が増す。
その中間に、ネズミの位置がある。境界に立ち続けることで、彼らは人の世界を使い続けてきた。
🔎 4. 境界に立つという選択
ネズミは、人に寄り添うことも、敵対することも選ばなかった。どちらにも踏み込まず、あいだに立つ。
その姿は、環境に強く依存しながら、環境を支配しない生き方でもある。ネズミは、変わり続ける世界の中で、位置をずらしながら残ってきた。
🌙 詩的一行
境界に残る小さな足跡が、人と自然の距離を測っている。
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