― 聴く心が季節をつなぐ ―
🗂目次
🍃音の系譜
鈴虫の声は、
親から子へ伝えられるものではない。
けれど、聴く耳は受け継がれていく。
祖父の家の縁側で聴いた音、
父の話に出てきた秋の夜。
それらは、言葉ではなく“感覚”として残る。
季節の音を覚えているということ。
それが、人の記憶のかたちだ。
👂聴くという継承
ある人は虫を飼い、
ある人はただ夜に耳を澄ます。
それぞれの聴き方があって、
それぞれの秋がある。
音は、所有できない。
けれど、聴いた人の心の中で生きつづける。
それが、最も静かな継承のかたち。
🌾家の中の秋
古い家の片隅に、
今も虫籠を置く人がいる。
その音を聞きながら、
湯気の立つお茶をすすり、
季節の終わりを確かめる。
テレビの音に混じっても、
鈴虫の声だけは時間の外から届く。
家の中に秋を入れるという、
小さな儀式。
🌙時を越える声
百年前も、千年前も、
同じような音が夜に響いていた。
その声を聴いた人がいて、
同じように季節を感じた。
鈴虫の声は、
時間を越えて人の心を結ぶ。
“音の記憶”とは、
命の記憶でもあるのだ。
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