🐸 カエル12:モリアオガエル ― 森に浮かぶ白い巣のつくり手 ―

カエルシリーズ

― 雨の森に、白い泡の塊がそっと揺れている。枝の上に浮かぶその不思議な巣の下には、静かな水面が広がり、季節の雨を受けながら生命の気配を深く抱えている。モリアオガエルは、泡巣という独特の産卵スタイルをもつカエルで、森の湿りと光のなかで生きる姿が印象的だ。

🐸目次

📘 基礎情報

  • 分類: アマガエル科 アオガエル属
  • 学名: Rhacophorus arboreus
  • 分布: 本州中部〜東北南部の山地林
  • 体長: 約4〜7cm
  • 食性: 昆虫・小型無脊椎動物
  • 繁殖期: 5〜7月/池・沼・水たまりの上の枝に泡巣をつくる
  • 特徴: 泡巣産卵・樹上性・大きな吸盤

🐸 1. モリアオガエルという存在

モリアオガエルは、日本の“森のカエル”を代表する存在だ。鮮やかな緑色の体と大きな吸盤をもち、枝の上を自在に移動する姿が目を引く。とくに有名なのは、木の枝に泡の塊をつくる独特の産卵行動で、白い巣が雨の森に浮かぶように見える。

🪰 2. 生態と行動

モリアオガエルの産卵行動は非常に特徴的で、メスが産卵し、オスが泡立てて巣をつくる。孵化したオタマジャクシは雨や重みで泡巣が破れたときに水中へ落ちるという、森の環境を生かした方法だ。

  • 樹上で生活する時間が長い
  • 産卵は集団で行われることがある
  • 夜間に活発に動く

吸盤が発達しているため、木の幹や枝にしっかりとつかまり、湿った森の空気の中で暮らしている。

🌿 3. 環境と分布

本州中部から東北南部の山地に分布し、森に囲まれた池や沼が主要な繁殖地となる。周囲が樹林に覆われた静かな水辺を好み、人が入り込みにくい環境ほど繁殖に適している。

  • 山地の池・沼・湿地を利用
  • 森林が深い地域に多い
  • 気象条件により産卵数が大きく変わる

環境変化に敏感で、森林伐採や水辺の改変が個体数に影響しやすい種である。

🔎 4. 観察のポイント

観察するなら繁殖期がもっともわかりやすい。池の上の木の枝を見上げると、白い泡巣がいくつも並んでいることがある。夜間には水辺近くの木の幹に張りついている姿も見られる。

  • 泡巣は白く大きく目立つ
  • 雨が多い日ほど産卵行動が活発
  • 樹上性なので足元よりも“上”を探すと見つけやすい

🌙 詩的一行

森の匂いをふくむ白い巣が、静かな水面にそっと未来を落としていく。

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