― 土に落ちたソバの粒は、水を吸った瞬間からすべてが動き始める。芽が土を押し上げ、三角の葉が光を受けるまでの数日は、驚くほど速く、ためらいがない。ソバという作物は、短い季節を駆け抜けるために、生まれた瞬間から全力だ。
ここでは、発芽から初期成長、草丈が伸びる速度、開花までの約30日の道のりを整理し、ソバがどのように白い花を咲かせるところまでたどり着くのかを見ていく。
🌾目次
🌱 1. 発芽 ― 土を押し上げる最初の力
ソバの発芽速度は穀物の中でも特に早い。条件がそろえば、わずか2〜3日で子葉が地上に現れる。
- 吸水から発芽まで: 適温は15〜25℃
- 殻を持ち上げる: 子葉がそのまま殻を押し上げて出てくる
- 根の性質: 細く真っ直ぐ、深く張りすぎない
ソバは雑草よりも先に光をつかむことで競り勝つ“スピード型”植物。その始まりがこの発芽だ。
🌿 2. 初期成長 ― 日ごとに姿を変える
発芽後の成長は一気に進み、わずか10日で草丈10cm前後まで伸びる。
- 葉の変化: 丸い子葉 → 三角の成葉へ
- 茎の伸長: 光を求めてまっすぐ上へ
- 倒伏しやすい: 上への成長を優先するため
まだ弱いように見えるが、このスピードこそがソバの武器だ。
🌼 3. つぼみの形成 ― 茎の先端が動き出す
播種から20日ほどすると、茎の先端に小さな節が生まれ、やがて白い花のもととなるつぼみが並ぶ。
- 節の形成: 芽が分かれ、花序の準備が始まる
- 葉の配置: 光を最大限受けるため交互に展開
- エネルギーの集中: 生長点が花づくりに切り替わる
この段階に入ると、いよいよソバ畑は「白い霧」へ向けて動き出す。
🌤 4. 開花までの条件 ― 温度・光・水分
開花は播種後およそ30日で起こるが、そのタイミングを左右するのは環境だ。
- 温度: 18〜25℃で安定、低温だと遅れる
- 光: 日照不足は草丈が徒長しやすい
- 水分: 過湿に弱い、乾き気味のほうが健全
このバランスが取れた畑ほど、花はそろって咲き、実りへの道が整う。
🌙 詩的一行
芽が光をつかむたび、ソバの短い季節は静かに前へ進んでいく。
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