日本に輸入されている世界のマグロ産地まとめ【種類別・海域別】

マグロシリーズ

日本に輸入されている世界のマグロ産地まとめ【種類別・海域別】

日本の食卓に並ぶマグロの多くは、世界中の海から集まってきた魚たちです。 近海ものや大間のクロマグロだけでなく、台湾・東南アジア・地中海・南半球など、さまざまな産地から冷凍・生のマグロが日本に届いています。

この記事では、「日本に実際に輸入されているマグロ産地だけ」に絞って、海域別・種類別に整理します。どの国から、どんなマグロが来ているのかを把握することで、寿司ネタや刺身の背景がぐっと立体的になります。

1. 日本に輸入されるマグロの基本構造

日本に入ってくるマグロは、主に次の5種類です。

  • クロマグロ(本マグロ)…近海物・地中海・北大西洋など
  • ミナミマグロ(インドマグロ)…オーストラリア・ニュージーランド・南アフリカなど
  • メバチ…台湾・フィリピン・インドネシア・韓国など
  • キハダ…東南アジア・中南米など
  • ビンチョウ(ビンナガ)…太平洋各地・南半球など

このうち、量の柱になっているのはメバチ・キハダ・ビンチョウで、回転寿司や外食チェーンの多くを支えています。一方で、クロマグロ・ミナミマグロは「高級枠」を担う存在として、日本の市場で特別な位置づけを持っています。

2. 北大西洋のマグロ産地:カナダとアメリカ

まずは、日本にとっては「量は少ないが質が高い」北大西洋産地から見ていきます。

2-1. カナダ産大西洋クロマグロ

カナダは、日本向けには比較的少量ながら質の高い大西洋クロマグロを送り出している産地です。

  • 主な種類:大西洋クロマグロ(Atlantic Bluefin)
  • サイズ:200kgクラスの大型個体が中心
  • 特徴:一本釣り・延縄が多く、血抜きや処理が丁寧で、脂質のバランスが良い
  • 流通形態:生のまま空輸されるケースもあり、高級すし店や専門店で扱われることが多い

日本全体でみると数量はごく少数ですが、「毎年カナダのマグロを扱える店」=安定した仕入れルートを持つ店と言って良く、プロから見ても特別なポジションにあります。

2-2. アメリカ東海岸

アメリカ東海岸でも大西洋クロマグロが水揚げされますが、日本向けはごく少量です。多くはアメリカ国内の市場やレストランで消費され、日本に来るのは一部の高品質ロットに限られます。

3. 地中海のクロマグロ:日本市場の重要な柱

日本にとって、地中海は近年ますます重要度を増しているクロマグロの産地です。蓄養(いったん生け簀に入れて太らせる方式)によって、脂乗りと安定供給を両立させています。

3-1. スペイン産クロマグロ

  • 主な種類:地中海産クロマグロ
  • 特徴:蓄養によって脂がきれいに乗り、身質が安定している
  • 用途:高級すし店からチェーン店まで幅広く使用されるようになってきた

スペインは、地中海産マグロの中核的な輸出国として、日本市場でも存在感が大きくなっています。

3-2. マルタ・クロアチア・イタリア

地中海では、スペイン以外にも次の国々から日本へクロマグロが輸出されています。

  • マルタ:蓄養クロマグロの重要産地。脂の質が非常に良く、高級店向けロットも多い。
  • クロアチア:マルタと同様に、肥育型クロマグロの産地として知られる。
  • イタリア:延縄で獲られた地中海クロマグロが一部日本に向かう。

これら地中海産のクロマグロは、日本近海のクロマグロとはまた違う「上品でクリアな脂質」を持ち、日本のすし文化に新しい選択肢をもたらしています。

4. 東アジア・東南アジア:外食を支えるメバチ・キハダの海

日本の外食産業や回転寿司を支えているのが、台湾・東南アジア・韓国などから輸入されるキハダ・メバチです。量の面で欠かせない海域です。

4-1. 台湾:最大級の供給国

  • 主な種類:メバチ・キハダ
  • 特徴:近海・遠洋の両方でマグロ漁を行い、日本向けの冷凍マグロを大量に供給
  • 役割:回転寿司やチェーン店のマグロを支える「量の柱」

台湾産は、価格・品質・供給量のバランスが良く、日本の消費を支える基盤的な存在です。

4-2. インドネシア・フィリピン・ベトナム

東南アジアは、キハダ・メバチの重要な供給源です。

  • インドネシア:東南アジアでも特にマグロ漁が盛んで、日本向け輸出量が多い。
  • フィリピン:大型メバチが多く、冷凍技術の向上で刺身用としての評価も上がっている。
  • ベトナム:ここ10〜20年で日本向けマグロ輸出を伸ばしており、品質管理が急速に改善している。

これらの国々のマグロは、外食チェーンや量販店で「当たり前のマグロ」として並ぶ一方、その背景にある漁業と加工の現場には大きな変化と努力があります。

4-3. 韓国

  • 主な種類:メバチ・キハダ
  • 特徴:近海ものに加え、海外で獲ったマグロを自国で再処理して日本へ輸出するケースもある。

韓国は、日本にとって安定した補完的な供給国として機能しており、冷凍マグロの重要な一角を担っています。

5. 南半球のミナミマグロ:オーストラリア・ニュージーランド・南アフリカ

ミナミマグロ(インドマグロ)は、南半球の冷たい海で育つ高級マグロです。日本が輸入している主な産地は、あなたが挙げた通り次の3カ国です。

5-1. オーストラリア産ミナミマグロ

  • 特徴:蓄養(いったん生け簀に入れて太らせる方式)が中心で、脂のりが安定している。
  • 役割:日本にとってミナミマグロ供給の中核。高級すし店・専門店で広く使われる。

5-2. ニュージーランド産ミナミマグロ

  • 特徴:天然ミナミマグロの品質が高く、大型個体も多い。
  • 評価:日本向けに最高ランクが送られることもあり、プロの間での信頼が厚い。

5-3. 南アフリカ(ケープタウン)産ミナミマグロ

  • 特徴:天然ミナミマグロの産地。数量は安定しないが、脂の質が良く「隠れた名産地」として知られている。
  • 用途:一部の高級ルート・専門ルートで扱われることが多い。

ミナミマグロは、これらの国からの輸入によって日本の「トロ文化」を静かに支えている存在と言えます。

6. 中南米のマグロ産地:メキシコ・エクアドル・ペルー

中南米からも、主に冷凍のキハダ・メバチが日本へ入ってきています。

  • メキシコ:太平洋側を中心にマグロ漁が行われ、キハダ・メバチが日本に向かう。
  • エクアドル:キハダ漁が盛んで、缶詰・加工品経由の日本向けも多い。
  • ペルー:同じく太平洋側でキハダ・メバチが獲られ、一部が日本に輸入される。

中南米は、日本にとって「量的にはそこまで大きくないが、全体供給を支えるサブの柱」のような位置づけです。

7. 世界のマグロ産地と日本の食卓

ここまで見てきたように、日本のマグロは「国内近海」と「世界の海」が組み合わさって成り立っている食文化です。

  • プレミア枠:北大西洋(カナダ)、地中海、近海クロマグロ
  • 高級トロ枠:南半球のミナミマグロ(オーストラリア・ニュージーランド・南アフリカ)
  • 量の柱:台湾・東南アジア・韓国のメバチ・キハダ
  • サブの柱:中南米のキハダ・メバチ

一皿のマグロ寿司の裏側で、どの海、どの国から来た魚なのかを意識してみると、同じネタでも見え方が変わってきます。


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