🐋クジラ19:個体数減少の現状 ― 音・網・気候変動 ―

クジラシリーズ

― 海の中で起きている変化は、クジラたちの数に静かに影を落としている。
音、網、気候。人の営みと環境の変化が重なり、
海の巨大な生き物たちは、見えない圧力のなかで暮らしている ―


🪸目次


📉 1. 回復しきれない個体数 ― 種ごとに異なる現状

商業捕鯨が止まったあとも、クジラの個体数はすぐに元へ戻らない。
種によっては増えているが、依然として回復の遅い群れもある。

  • シロナガスクジラ:一部海域で回復傾向
  • ナガスクジラ:地域により差が大きい
  • アカボウクジラ類:生態不明で評価が難しい
  • 北大西洋のセミクジラ:依然として極めて少数

回復速度の違いは、寿命の長さ・繁殖周期・地域環境など多くの要因が重なるためだ。


🔊 2. 海中騒音 ― 渡りと採餌を乱す“海の雑音”

船舶交通や海底工事が増えるにつれ、
海の中には低周波の騒音が広がっている。

  • 航路の近くでコミュニケーションが途切れる
  • 採餌のクリック音が届かなくなる
  • 長い距離を移動する種ではルートが乱れる

静かな海が失われることは、クジラにとって大きな環境変化になる。


🕸️ 3. 漁網との衝突 ― からまり・誤捕獲・船舶衝突

網にからまる、または誤って捕獲される問題は
いまも世界の海で深刻な課題になっている。

  • 漂流するロープに巻きつく事故
  • 沿岸漁網への誤捕獲
  • 船舶との衝突による負傷

特に小型群や沿岸性の強いクジラでは、
この影響が個体数に直結しやすい。


🌡 4. 気候変動 ― 餌場の移動と季節のずれ

気候変動は海の温度・流れ・生産力を変え、
クジラの生活サイクルにも大きな影響を与えている。

  • オキアミの分布が変わる → ヒゲクジラの餌場がズレる
  • 必要な季節に餌が少ない年が増える
  • 回遊ルートそのものが変化する可能性

海のリズムが変われば、クジラの一年の動きもそのまま揺らぐ。


🌙 詩的一行

静かな影が海を渡るたび、変わりゆく世界の重さがそっと寄り添ってくる。


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