🐋クジラ5:ヒゲクジラの仲間 ― 巨体を支える濾過のしくみ

クジラシリーズ

■ 基礎情報

  • 分類: 哺乳綱 ウシ目 クジラ亜目 ヒゲクジラ類
  • 代表種: シロナガスクジラ、ナガスクジラ、ザトウクジラ、コククジラ
  • 学名: Mysticeti
  • 体長: 約10〜30m
  • 体重: 約20〜180トン
  • 分布: 世界中の海(寒帯〜熱帯)を季節回遊
  • 食性: オキアミ・小魚・プランクトンの濾過食
  • 特徴: 歯を持たずヒゲ板で濾過、低周波の声、巨大化しやすい

― ヒゲクジラは、海の最大種たちを含むグループであり、口内に並ぶヒゲ板で海水を濾し取る独特の食事法を持つ。濾過食は短時間で大量のエネルギーを得るための、海に適応した高度なしくみである ―


🪸目次


1. ヒゲ板 ― 濾過食を支える構造

ヒゲクジラの口にはケラチン製のヒゲ板が並び、これが海水をこし取るフィルターとなる。

  • 海水を吸い込む → ヒゲ板で濾す → 餌だけ取り込む
  • オキアミや小魚を大量に摂取できる
  • ヒゲ板の大きさ・本数は種ごとに異なる

2. ランジフィーディング ― 巨体を動かす捕食戦略

多くの大型ヒゲクジラが行う、迫力ある突進捕食法。

  • 加速して突っ込む → 海水と餌を一気に吸い込む
  • 喉のひだ(喉袋)が大きく膨らむ構造
  • 口を閉じて水だけ排出、餌を確保

短時間で大量のエネルギーを得るための進化的戦略である。


3. 回遊と生活圏 ― 寒暖を往復する海の道

ヒゲクジラは季節によって大移動する。

  • 夏: 高緯度の海で採餌(オキアミが豊富)
  • 冬: 暖かい海で繁殖・出産

この回遊ルートは数千キロにおよび、海流・地形・水温を記憶していると考えられている。


4. 声とコミュニケーション ― 海に響く低周波

ヒゲクジラは低周波の声で遠距離通信を行う。

  • 数十〜数百キロ届く長距離通信能力
  • 求愛・群れの合図・位置の共有などに利用
  • ザトウクジラは複雑な“歌”を持つ

深海は光が届かないため、音は彼らにとって最も重要な感覚である。


5. ヒゲクジラ内の主な違い

  • シロナガスクジラ: 地球最大。主食はオキアミ。
  • ナガスクジラ: 長く細身で高速移動が得意。
  • ザトウクジラ: 泡の輪で餌を囲うバブルネット採餌。
  • コククジラ: 海底を掘り返して底生生物を食べる。

🌙 詩的一行

大きな口に揺れるヒゲは、海の記憶を静かにすくい上げる。


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