🐓ニワトリ7：薩摩地鶏 ― 武家文化の中で残った姿 ―

― 研ぎ澄まされたような体つきで、静かに地面を踏みしめる薩摩地鶏。武家の土地で育まれた歴史が、姿にも気質にも残っている。強さと落ち着き、その両方をもつ在来の鳥は、時代を越えて“薩摩の気配”を今に伝えてくれる ―

薩摩地鶏は、鹿児島の武家文化とともに長く育まれてきた在来種だ。硬すぎず柔らかすぎない“張り”のある肉質は料理人にも評価され、郷土料理として深く定着している。土地の歴史と気候の中で形づくられたこの品種には、薩摩独自の美学が宿っている。

🐓目次

薩摩地鶏の体は引き締まり、無駄がない。胸まわりや脚の筋肉がしっかりしており、動きに“張り”がある。武家文化の中で選抜されてきた歴史が、いまの体型にも残っている。

姿だけで、どこか“凛とした空気”を帯びている。

薩摩地鶏の肉は、ほどよい弾力と濃い旨味が特徴だ。名古屋コーチンや比内地鶏に比べて、やや軽やかな香りで、噛むごとに旨味がにじむ。炭火焼きや汁物など、火入れでも食感が崩れにくい。

“薩摩の地鶏”と呼ばれる理由は、このバランスの良さにある。

薩摩地鶏は、落ち着いた気質が多いが、環境への順応性も高い。地面をしっかり踏みしめ、静かに周囲を観察するような行動が見られる。

外見だけでなく、行動にも“気品”を感じさせる品種だ。

薩摩地鶏は、薩摩藩の時代から武家の家で飼われてきた歴史があり、鶏文化の一部として大切にされてきた。戦後に一度衰退したものの、地元の努力によって系統が保たれ、現在では鹿児島を代表する在来地鶏となっている。

歴史の重なりが、この品種の価値をしっかり支えている。

芯のある体が、薩摩の静かな気配をそっとまとう。