― 最後にふわりと立ち上がる香り。その陰には、火と温度を見極める細やかな技がある ―
火入れ(ひいれ)は、茶づくりの最終段階に位置する工程であり、茶の香りの方向性を決定づける核心だ。弱火で甘い香りを引き出すのか、強火で香ばしさを与えるのか――温度と時間の調整ひとつで、同じ茶でもまったく違う表情になる。
🌿目次
- 🔥 1. 火入れとは ― 最後に香りを整える工程
- 🌬 2. 温度と時間 ― 香りを分ける二つの軸
- 🍯 3. 弱火の火入れ ― 甘さと丸みを引き出す
- 🔥 4. 強火の火入れ ― 香ばしさとキレをつくる
- 🌫 5. 産地ごとの火入れ文化 ― 香りの個性を形づくる
- 🌙 詩的一行
🔥 1. 火入れとは ― 最後に香りを整える工程
火入れは、乾燥した茶葉に熱を加えて香りを仕上げる工程。火を入れることで、茶の中に眠っていた香気成分が目を覚まし、香りが明確な形になっていく。
- 香りを立たせる
- 湿気を抜き保存性を高める
- 味の方向性を整える
火入れが弱いと未熟な香りになり、強すぎると香りが飛ぶ――調整の妙が問われる工程だ。
🌬 2. 温度と時間 ― 香りを分ける二つの軸
火入れの香りは、主に温度と時間の組み合わせで決まる。
- 低温 × 長時間 → やわらかく甘い香り
- 高温 × 短時間 → 焙煎香・香ばしさが強い
ほんの数十秒、数℃の違いで、茶の表情は驚くほど変わる。
🍯 3. 弱火の火入れ ― 甘さと丸みを引き出す
弱火の火入れは、茶の甘さや丸みを引き出す。新茶特有の爽やかな香りも残しやすい。
- 若い香り(青葉香)を活かす
- 甘みと柔らかさを保つ
- 煎茶・玉露などに適する
優しい香りを求める産地では、弱火の火入れが好まれる。
🔥 4. 強火の火入れ ― 香ばしさとキレをつくる
強火の火入れは、焙煎香や香ばしさを前面に出す。番茶やほうじ茶は強火の代表だ。
- 香ばしさが立ち上がる
- キレのある味わい
- 夏の葉や硬い葉との相性が良い
香りの方向を大きく変える強火は、茶葉の個性を“再構築”する力を持つ。
🌫 5. 産地ごとの火入れ文化 ― 香りの個性を形づくる
火入れの強弱は産地の文化とも深く結びついている。
- 京都宇治 → 弱火で柔らかい香りを重視
- 静岡 → 中火で爽やかさと香りのバランス
- 九州(八女・知覧) → やや強火で力強さを出す
茶の香りは、土地ごとの火入れ哲学の反映でもある。
🌙 詩的一行
火と葉が静かに向き合う場所で、香りは最後の形をまとってゆく。
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