― ひとつひとつの芽を読み、手で摘むか、機械で刈るか。その選択が、茶の香りの方向を決めていく ―
チャノキの摘採(てきさい)は、茶づくりの中でもっとも香りに影響する工程だ。同じ畑でも、手で摘むのか、機械で刈るのかで、茶の表情は大きく変わる。丁寧に揃った新芽だけを選ぶのか、広く連続して収穫するのか――その違いが味と香りを生む。
🌿目次
- ✋ 手摘み ― 芽を選び抜く最も繊細な方法
- 🛠 機械摘み ― 畑の規模を支える効率の方法
- 🍃 芯・一芯二葉とは ― 茶の基準をつくる形
- 🔍 選別(せんべつ) ― 香りの質を決める最後の工程
- 🍵 摘採方法で何が変わる? ― 味・香り・茶種
- 🌙 詩的一行
✋ 手摘み ― 芽を選び抜く最も繊細な方法
手摘みは、茶づくりでもっとも丁寧で繊細な方法。新芽の状態を目と指で確かめながら、必要な部分だけを摘む。
- 柔らかい芽だけを選べる
- 「芯」「一芯二葉」など理想の形を揃えられる
- 傷みにくく、香りの質が高い
時間も手間もかかるが、品質は最高クラス。玉露や高級煎茶の多くは手摘みでつくられる。
🛠 機械摘み ― 畑の規模を支える効率の方法
広い茶畑を支えるのが機械摘み。二人で持つ可搬式の摘採機や、大型の乗用型摘採機で刈り取る。
- 短時間で大量に収穫できる
- 芽の状態が均一な畑ほど向いている
- 強く刈りすぎると硬い葉も混ざりやすい
品質の細やかさでは手摘みに劣るが、安定した生産には欠かせない方法になっている。
🍃 芯・一芯二葉とは ― 茶の基準をつくる形
茶葉の収穫でよく出てくる言葉に、「芯」や「一芯二葉(いっしんによう)」がある。
芯は芽の先端の一番若い部分、一芯二葉は芯と、その下に展開した二枚の葉をセットにした形を指す。
この形は、旨味・香り・渋みのバランスが最も良いとされ、手摘みではここを狙って収穫する。
🔍 選別(せんべつ) ― 香りの質を決める最後の工程
摘んだ葉は、そのままでは品質が揃わない。そこで行われるのが選別(せんべつ)だ。形・大きさ・硬さを分けて整えることで、茶の表情がはっきりしてくる。
- 柔らかい芽 → 煎茶・玉露などへ
- やや硬い葉 → 番茶・焙じ茶へ
- 茎の部分 → 棒茶・茎茶へ
選別は、茶の“最終的な顔つき”を決める重要な工程だ。
🍵 摘採方法で何が変わる? ― 味・香り・茶種
手摘みと機械摘みでは、同じ畑でも出来上がる茶が大きく変わる。
- 手摘み:新芽中心 → 高級煎茶・玉露向き
- 機械摘み:硬さの違う葉が混ざる → 深蒸し茶・番茶・ほうじ茶向き
摘採方法は、そのまま茶の“用途と香りの方向”を決める選択でもある。
🌙 詩的一行
人の手と季節の光が交わる場所で、一枚の芽の香りがそっと決まっていく。
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