🌿 チャノキ11:摘採と選別 ― 手摘みと機械のちがい

チャノキシリーズ

― ひとつひとつの芽を読み、手で摘むか、機械で刈るか。その選択が、茶の香りの方向を決めていく ―

チャノキの摘採(てきさい)は、茶づくりの中でもっとも香りに影響する工程だ。同じ畑でも、手で摘むのか、機械で刈るのかで、茶の表情は大きく変わる。丁寧に揃った新芽だけを選ぶのか、広く連続して収穫するのか――その違いが味と香りを生む。

🌿目次

✋ 手摘み ― 芽を選び抜く最も繊細な方法

手摘みは、茶づくりでもっとも丁寧で繊細な方法。新芽の状態を目と指で確かめながら、必要な部分だけを摘む。

  • 柔らかい芽だけを選べる
  • 「芯」「一芯二葉」など理想の形を揃えられる
  • 傷みにくく、香りの質が高い

時間も手間もかかるが、品質は最高クラス。玉露や高級煎茶の多くは手摘みでつくられる。

🛠 機械摘み ― 畑の規模を支える効率の方法

広い茶畑を支えるのが機械摘み。二人で持つ可搬式の摘採機や、大型の乗用型摘採機で刈り取る。

  • 短時間で大量に収穫できる
  • 芽の状態が均一な畑ほど向いている
  • 強く刈りすぎると硬い葉も混ざりやすい

品質の細やかさでは手摘みに劣るが、安定した生産には欠かせない方法になっている。

🍃 芯・一芯二葉とは ― 茶の基準をつくる形

茶葉の収穫でよく出てくる言葉に、「芯」「一芯二葉(いっしんによう)」がある。

は芽の先端の一番若い部分、一芯二葉は芯と、その下に展開した二枚の葉をセットにした形を指す。

この形は、旨味・香り・渋みのバランスが最も良いとされ、手摘みではここを狙って収穫する。

🔍 選別(せんべつ) ― 香りの質を決める最後の工程

摘んだ葉は、そのままでは品質が揃わない。そこで行われるのが選別(せんべつ)だ。形・大きさ・硬さを分けて整えることで、茶の表情がはっきりしてくる。

  • 柔らかい芽 → 煎茶・玉露などへ
  • やや硬い葉 → 番茶・焙じ茶へ
  • 茎の部分 → 棒茶・茎茶へ

選別は、茶の“最終的な顔つき”を決める重要な工程だ。

🍵 摘採方法で何が変わる? ― 味・香り・茶種

手摘みと機械摘みでは、同じ畑でも出来上がる茶が大きく変わる。

  • 手摘み:新芽中心 → 高級煎茶・玉露向き
  • 機械摘み:硬さの違う葉が混ざる → 深蒸し茶・番茶・ほうじ茶向き

摘採方法は、そのまま茶の“用途と香りの方向”を決める選択でもある。

🌙 詩的一行

人の手と季節の光が交わる場所で、一枚の芽の香りがそっと決まっていく。

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