🌿 チャノキ8:茶葉の内部 ― 成分と香りの正体

チャノキシリーズ

― 一枚の葉の中には、渋みも旨味も香りも、すべてが静かに折り重なっている ―

お茶の味や香りは、外から加えるものではない。 チャノキの葉の内部に、もともと“素材”として存在している。 発酵の度合い、蒸し方、火入れ──どんな製茶工程も、この素材をどう開かせるかの違いにすぎない。


🌿目次


🧪 茶葉の内部には何がある? ― 4つの主要成分

チャノキの葉の内部には、茶の味と香りを決める4つの主要成分がある。

  • テアニン:旨味・甘み
  • カテキン:渋み・爽やかさ
  • 香気前駆物質:火入れで立ち上がる香りの素材
  • カフェイン:苦味・刺激

これらのバランスが、 緑茶・烏龍茶・紅茶の違いを生み、 さらに産地や季節の個性を形づくる。


🍵 テアニンと香り ― 春の旨味の源

テアニンは、谷間で育つような柔らかい新芽に多い成分。 一番茶が甘く、まろやかなのは、このテアニンが豊富だから。

  • テアニン → 甘み・旨味
  • 芽の柔らかさで含有量が変わる
  • 日光に当たるとカテキンへ変化していく

つまり「旨味の強いお茶」は、 “光が強すぎない環境で育った新芽”の結果でもある。


🌿 カテキン ― 渋み・爽やかさの正体

カテキンは光のストレスに反応して増える成分。 夏に摘まれた葉が渋みを持つのは、このカテキンが多いためだ。

  • 光が強い → カテキン増加 → 渋みUP
  • 抗酸化作用・爽やかさの元
  • 発酵させると風味がまろやかになる

緑茶のキリッとした味の核は、このカテキンにある。


🌬 香気成分 ― 火入れで立ち上がる香り

香りを決めるのは香気前駆物質。 これは葉の内部に静かに蓄えられていて、 火入れ(焙煎)や発酵で一気に香りとして立ち上がる

  • 青々しい「青葉香」
  • 甘い「火香」
  • 軽やかなフローラル香
  • ウーロン茶・紅茶特有の香り

つまり香りの違いは、 「外から香りを加える」のではなく、 もともと葉の中に潜んでいた香りを開く」ということ。


☀️ カフェイン ― 目覚めと苦味をつくる成分

カフェインは新芽に多い成分で、苦味と軽い刺激の元。 紅茶や抹茶にカフェインが多いのは、新芽を多く使うからでもある。

  • 苦味のアクセント
  • 覚醒作用
  • 発酵・火入れで印象が変わる

カフェインは味を引き締める“陰の立役者”。


🌱 成分は季節で変わる ― 春・夏・秋のちがい

茶葉の内部成分は、季節で驚くほど変わる。

  • 春(新芽):テアニン多 → 旨味強い
  • 夏(二番茶):カテキン増 → 渋み強い
  • 秋(秋芽):香気成分バランス良い・穏やか

茶の季節ごとの味わいは、こうした成分変化そのものだ。


🌙 詩的一行

葉の奥に眠る香りの素材が、季節と火を受けてそっと目を覚ます。


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