🐝ミツバチ18：ミツバチと農 ― 受粉が支える暮らし

― ミツバチが一度花を訪れるたびに、畑と食卓の未来がそっと形づくられていく ―

農の景色の裏には、いつも小さな働き手がいる。ミツバチが花粉を運ぶことで、実がつき、種が残り、畑の一列一列が季節をつないでいく。その営みは、人の目にはほとんど見えないが、農業の基盤を静かに支えている。 “受粉”という行為の中に、自然と農の深いつながりが息づいている。

🐝目次

花は蜜をつくり、ミツバチはそれを必要とする。その交換の中で、花粉が運ばれ、次の実りが生まれる。

・花粉を運ぶことで“受粉”が成立
・受粉が実をつくり、種を残す
・ミツバチの体毛は花粉が付きやすく、受粉に最適

ミツバチは、花にとっての“訪問者”であると同時に、新しい命の運び手でもある。

私たちが日常的に食べている作物の多くが、ミツバチの受粉に支えられている。果樹園、野菜畑、花き農家――どこでもミツバチの働きが結果を左右する。

・りんご・梨・梅などの果樹
・いちご・ブルーベリー
・スイカ・メロン
・アブラナ科の野菜や種子作物
・油糧作物や牧草

ミツバチが飛ぶ距離、天候、巣箱の置き方――どれも収量に直結する。豊かな実りは、花畑だけでなく、畑の片隅の羽音にも支えられている。

農家は時に、花の季節を追ってミツバチを連れて移動する。これが移動養蜂。蜜源と受粉を求めて、春から初夏へ、北へ南へと旅をする。

・1〜2週間単位で畑に巣箱を置く
・花が終われば次の地域へ移動
・果樹園と養蜂家が協力し合う循環

季節の流れを読み、蜂と人が同じリズムで動く――そんな農の姿が今も各地にある。

ミツバチが働くには、畑だけでなく“花のある風景”が欠かせない。モノカルチャーの畑よりも、雑木林や草地が混ざり合う里山のほうが、人工的な農地よりはるかに蜂が安定する。

・畑の周囲に花を植える“花の帯（フラワーストリップ）”
・田畑と雑木林が入り混じる里山構造
・河川敷や道端の花も重要な蜜源

多様な花が続く風景は、ミツバチと農の両方を長く支える基盤になる。

世界中でミツバチが減少している。気候変動、病気、農薬、土地の単調化――原因は一つではなく、複合的だ。

・受粉効率の低下
・果樹の収量不安
・野生植物の更新が滞る
・農と自然の循環全体が弱まる

羽音が減ると、風景の未来が静かに揺らぐ。農にとっても、自然にとっても、蜂の存在は欠かすことができない。

花と畑のあいだを行き交う羽音が、暮らしの奥でそっと実りを結んでいる。