🐝ミツバチ12:マルハナバチ類 ― 風冷たい地に生きる蜂たち

ミツバチシリーズ

【分類】ハチ目(膜翅目)ミツバチ科 マルハナバチ属(Bombus)
【代表種(日本)】セイヨウオオマルハナバチ/エゾオオマルハナバチ/トラマルハナバチ/クロマルハナバチ など
【体長】働き蜂:10〜15mm/女王蜂:17〜23mm
【体色】黒と黄色を基調にした“毛むくじゃら”の体
【分布】北海道〜本州の冷涼地を中心に広く分布
【巣の特徴】地面の穴・草の隙間・廃巣など小型の巣を作る
【食性】高山植物・野草・樹木の花蜜・花粉
【季節】春に女王が単独で営巣開始、夏に群勢が最大、秋に衰退
【性質】温和で逃げやすいが、巣を刺激すると防衛的になる
【受粉】バズポリネーション(振動受粉)の常連種
【文化・利用】農業用の受粉蜂として導入された歴史をもつ


― 冷たい風の中でも、丸い体は花のそばでぬくもりを集める ―

マルハナバチ類(Bombus)は、冷涼な環境に強い大柄のハナバチだ。
丸くて毛深い体は保温力が高く、気温が低い朝でも花の上に姿を見せる。
高山や北国では、彼らがいなければ受粉が進まない植物も多い。


🐝目次


❄ マルハナバチとは ― 冷涼地の受粉者

マルハナバチは、体を覆う長い毛によって保温性が高く、寒さに強い。
雪どけの頃でも活動し、高山植物や春の野草をいち早く訪れる。

・大型で力強い
・低温でも飛べる
・訪花頻度が高く、受粉効率が良い

“寒さに強いミツバチ”として、日本の北の地域や山地で欠かせない存在だ。


🌿 巣の構造 ― 地面の穴に広がる“コロニー”

マルハナバチの巣は、地面の空洞や小動物の廃巣を利用してつくられる。 セイヨウミツバチのような整った巣板はなく、球状の育房が点在する“素朴な構造”だ。

・巣材は草・獣毛・枯葉など
・巣内は暖かく保たれ、幼虫を護るための構造が多い
・女王は春に単独で巣をスタートし、夏に群勢がピーク

自然の小さな隙間を利用する、生き物らしい巣づくりである。


🌸 花との関係 ― 冬の名残にも飛ぶ体の強さ

丸い体は保温力が高く、曇りの日や気温の低い朝でも活動できる。 そのため、春先の花や高山植物にとっては主要な受粉者になる。

・早春の花(フキノトウ、ミズバショウなど)
・初夏の高山植物(チングルマ、ハクサンイチゲ)
・野草や樹木の細かな花にも適応

気温が低い地域の植物の“最初の来訪者”であることが多い。


🎵 バズポリネーション ― 振動で花粉を解きほぐす

マルハナバチは、胸部の筋肉を震わせて花を振動させる“バズポリネーション”の使い手だ。 これにより、花粉が深部から外に飛び出し、効率的な受粉が可能になる。

・ナス科・ツツジ科の受粉に最適
・訪花時間は短く、効率が高い
・農業用に“受粉用マルハナバチ”が利用されてきた歴史も

冷涼地だけでなく、農耕地でも活躍する“受粉のプロフェッショナル”。


🧬 代表的な日本のマルハナバチ

日本には多くのマルハナバチ類が生息しているが、代表的なものを挙げる。

・クロマルハナバチ ― 黒い体に黄色帯。温和で観察しやすい。
・トラマルハナバチ ― 黄色と黒の縞模様。農地で見かけることが多い。
・エゾオオマルハナバチ ― 北海道に多く、大型で力強い。
・セイヨウオオマルハナバチ ― 外来種。定着が問題視されている。

地域ごとに“花を受粉する主役”が異なるのも、マルハナバチ類の魅力だ。


⚠ 外来種の問題 ― セイヨウオオマルハナバチの拡大

セイヨウオオマルハナバチは農業用に導入された外来種で、野生化して在来種との競合が問題になっている。

・在来種の巣を奪う
・花資源を独占する
・雑種化の懸念もある

一方で、農業では受粉者として重宝されており、人との関係が非常に複雑な蜂でもある。


🌙 詩的一行

冷たい風のなかで丸い体がほのかに揺れ、花に春の気配を落としていく。


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