― 川を下って海へ出た鮭は、潮の変化に適応しながら新しい生活を始める。海は広く、環境は刻々と変わるが、鮭は流れや水温の差を利用して成長の場を広げていく。本章では、海に入った鮭がどのように北の海へ移動し、成長していくのかを生態の視点から整理する。
海への移行は鮭の生活史における大きな転換であり、ここから続く回遊が成熟までの長い時間を支える。
🐟目次
🌊 1. 海への移行
川から海へ出た鮭は、淡水から海水へ環境が変わるため、体内の塩分濃度を保つ仕組みを調整する必要がある。稚魚は汽水域で徐々に海水へ適応し、塩分に耐えられる体の構造へ変化していく。
海では潮の満ち引きや波の影響を受けるため、鮭は群れをつくりながら広い水域へ移動する行動が見られる。群れは外敵を避けるためにも重要な役割を果たす。
🧭 2. 北の海への移動
海へ適応した鮭は、より餌の豊富な北方海域へ向かう。冷たい潮流にはプランクトンや小魚が多く、成長に必要な栄養が得やすいためである。
鮭は潮の向き、水温、海流の変化などを利用しながら長い距離を移動する。月の周期や日照時間の変化も移動のタイミングに影響を与えると考えられている。
🌤 3. 海での成長
北の海で鮭は数年をかけて大きく成長する。季節により餌の種類や量が変わるため、行動範囲も広がる。夏にはプランクトンや小型魚類を積極的に食べ、秋にかけて体の厚みや筋肉が増していく。
鮭は群れの中で行動しながらも、状況に応じてばらけたり再び集まったりする。海流や光の変化を読み取りながら餌を探す行動が繰り返される。
🌅 4. 回帰に向けた変化
成長が進むと、鮭の体は少しずつ回帰の準備を始める。水温や日照時間の変化が刺激となり、体内のホルモンが変化していく。これにより回遊のリズムの中に「帰り」の段階が組み込まれる。
この時期になると、鮭は広い海域から少しずつ沿岸へ近づき、やがて生まれた川へ戻る時期へ移行する。海での生活の終わりと、川への回帰の始まりがここから続いていく。
🌙 詩的一行
海で育った鮭は、静かに次の旅の準備を進めていた。
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