節から伸びた茎の先で、麦は静かに新しい段階へ進む。
葉の中に隠れていた穂が少しずつ姿を現し、
一本の茎が「実り」へ向かう道筋がはっきりしてくる。
出穂と開花は、麦にとって季節の光と風をまといはじめる瞬間であり、
その年の天候がもっとも影響する繊細な時期でもある。
🕊️ 目次
🌾 出穂とは ― 穂が葉鞘を抜ける瞬間
麦の穂は、葉鞘(ようしょう)の中で静かに育ち、
やがて茎の先端から外へと顔を出す。
これが出穂(しゅっすい)だ。
穂が姿を見せる速度は気温に左右され、
暖かい日が続くと一気に進み、寒さが戻ると動きが鈍くなる。
季節の変化を敏感に受け取る、麦らしい特徴が表れる場面でもある。
🌤 開花のタイミング ― 天候と光の影響
穂が出そろうと、麦は短い期間のうちに開花へ進む。
開花は天候に左右されやすく、晴れの日が続くと順調に進み、
雨や低温の日が続くと遅れが生じる。
とくに麦は、一日の中でも気温のわずかな変化に反応し、
花が開くタイミングを細かく調整している。
風が穂に触れると、内部で準備していた動きが一斉に始まる。
🌬️ 開花のしくみ ― 葯が割れ花粉が放たれる
麦の花は、外側に花びらを持たない風媒花だ。
護頴(ごえい)がわずかに開くと、内部から葯(やく)が現れ、
その表面が割れて花粉が放たれる。
開花は短い時間で一気に進むが、
これは天候の変化に影響されやすい風媒花だからこそ備わった特徴だ。
晴れと風がそろった日は、穂のまわりで細かな花粉が舞い、
その日のうちに受粉が進むことも多い。
🌙 詩的一行
風がそっと触れた瞬間、穂の奥から小さな花が光に応える。
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