🌾 ムギ8:粒 ― 備わる構造と蓄え ―

ムギシリーズ

麦の一粒には、植物が次の季節へつなぐための力が詰まっている。
硬い皮に包まれた胚乳は、でんぷんを中心とした大きな蓄えで、
その横には小さな胚が眠っている。

乾燥した土地でも長く持ちこたえるための構造と、
春に一気に芽を伸ばすための準備が、この小さな粒に収まっている。


🕊️ 目次


🌾 粒の内部構造 ― 胚と胚乳の役割

麦の粒は、大きく分けて胚(はい)胚乳(はいにゅう)から成る。
胚は将来の芽・根・葉になる部分で、植物の“本体”といえる場所だ。

一方、胚乳は胚を育てるための栄養庫で、
炭水化物を中心に豊富なエネルギーが蓄えられている。

限られた季節で素早く成長する麦にとって、
この大きな胚乳は生命線となる仕組みだった。


🌱 でんぷんの蓄え ― 芽生えを支えるエネルギー

麦の胚乳の多くは、でんぷんでできている。
発芽すると酵素が働き、このでんぷんを糖に変え、
胚が伸びるためのエネルギーとして利用する。

草原の短い春に合わせて一気に成長するため、
麦の粒は大きな蓄えを必要としていた。
その蓄えが、麦を主食にしやすい穀物へと育てる基盤にもなった。


🌬️ 乾燥に強い理由 ― 固い皮と呼吸の仕組み

麦の粒が乾燥に強いのは、固い種皮水分量の少なさによるものだ。
種皮がしっかり水分の出入りを制御するため、
乾いた環境でも内部の胚乳が守られる。

さらに、安定した呼吸ができるよう、酸素の出入りも調整されている。
この構造によって、麦は長い保存や乾燥地での栽培に向いた植物となった。


🌙 詩的一行

小さな粒の奥で、次の季節の気配が静かに息づいている。


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