麦の穂は、遠くから見ても特徴的だ。
まっすぐに伸びた軸に粒が並び、そこから細い芒(のぎ)が放射状に広がる。
この形はただの装飾ではなく、草原で受粉し、実りを安定させるために生まれた仕組みだ。
風に揺れるたび、穂は自然に合わせて静かに仕事をしている。
🕊️ 目次
🌾 芒(のぎ)の役割 ― 風を受けて穂を守る
麦の穂から伸びる細い突起が芒(のぎ)だ。
芒は、風を受けて熱を逃がし、穂を乾燥から守る働きを持つ。
また、雨粒や露が溜まらないように流し、
穂全体の湿りすぎを避ける役目も果たす。
乾燥地や風の多い草原で育ってきた麦にとって、
芒は環境に合わせた大切な工夫だった。
🌬️ 風媒花という仕組み ― 風に託す受粉
麦は、虫ではなく風で花粉を運ぶ「風媒花」だ。
穂が縦に長く伸びる形や、花粉が軽いことは、
風に乗りやすいように進化した特徴である。
花が開く時間帯も、風がよく流れる朝や夕方に合っており、
穂全体がわずかに揺れるだけで花粉が遠くまで届く。
草原に広がる麦畑は、風と植物の働きが重なる場所でもある。
🌱 粒の並びと穂の形 ― 実りを支える構造
麦の穂は、中央の軸(穂軸)に沿って粒が整然と並ぶ。
この並びは、短い季節で一気に実らせるための合理的な配置だ。
・粒が均等につきやすい
・風で倒れても受粉しやすい
・穂全体に光が届きやすい
また、栽培される中で穂は太く長くなり、
粒の数が増えるように改良されていった。
穂の形は、野生の姿と人の選び方が重ねられてできたものなのだ。
🌙 詩的一行
風が通るたび、穂は静かに揺れて命をつないでいく。
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