水の底には、静かに動く影がある。
泥をかき分け、水草のあいだを進み、小さな揺らぎを見逃さない。
その正体が、トンボの幼生・ヤゴだ。
トンボの一生の大半を占めるこの時期は、水辺の小さな循環そのものでもある。
🕊️ 目次
💧 ヤゴという存在 ― 水中の捕食者
ヤゴは、トンボの幼虫期の呼び名だ。
見た目はやや無骨で、地味な茶色をしているが、
その実態は水中の小さな捕食者である。
口の下には「マスク」と呼ばれる捕獲器官があり、
獲物を見つけると一瞬で伸ばして捕らえる。
この動作は早すぎて、肉眼では追えないこともある。
🌱 水辺の環境と暮らし ― 泥と光の世界
ヤゴは泥に身を潜め、水草の影に隠れながら生きる。
水温、光の量、流れの速さなど、環境の小さな差が暮らしに影響する。
水辺が豊かなら、ヤゴの姿も豊かになる。
逆に、水質が悪化するとすぐに数が減る。
彼らは水環境の変化に敏感で、その存在はひとつの指標になる。
🐟 小さな生態系 ― 捕食と循環
ヤゴは、水中の小さな昆虫やオタマジャクシを捕食し、
自分もまた魚や水鳥に狙われる。
この食う・食われるの関係が、水辺の循環を支えている。
ヤゴがいる水辺は、栄養が巡り、捕食関係が成立している証。
静かに見える池でも、その下には複雑な命のやり取りがある。
🪶 羽化の瞬間 ― 水から空への移行
成長を終えたヤゴは、水草や岩に登り、静かに身じろぎを止める。
そして殻を割り、ゆっくりと翅を広げていく。
水の世界を出て、初めて空気に触れる瞬間だ。
翅が乾き、光を受けたとき、ヤゴはトンボへ変わる。
その短い時間には、淡い静けさが宿っている。
🌙 詩的一行
水底の影は、風へ向かう準備をそっと続けている。
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