― 過去の田んぼに揺れていた、色のついた稲 ―
いま私たちが日常で口にする白い米粒。 しかしかつてのアジアには、黒、赤、緑―― 色をまとった稲が広く育てられていた。 これらは総称して古代米と呼ばれ、 失われた風景と人々の営みを静かに伝えている。
🌾目次
- 🟣 古代米とは ― 色を宿す稲の総称
- ⚫ 黒米(紫黒米) ― 守られてきた濃い紫
- 🔴 赤米 ― 稲作の源流を示す粒
- 🟢 緑米 ― 失われかけた希少な系統
- 🌾 白米への道 ― 多様な色から“白”が選ばれた理由
- 🌙 詩的一行
🟣 古代米とは ― 色を宿す稲の総称
古代米とは、品種名ではなく「色素を多く含む古い系統の稲」の総称。 代表的なのは次の3つだ。
・黒米(紫黒米)
・赤米
・緑米
これらは白米のように精白すると色が抜けるのではなく、 籾殻や糠層そのものに色素があるため、 存在そのものが「色を持った稲の系統」といえる。
⚫ 黒米(紫黒米) ― 守られてきた濃い紫
黒米は、粒の外側に紫黒色の色素(アントシアニン)が多い品種。 炊くと美しい紫色になり、栄養価が高いことから “薬米”として神事や祝い事にも使われてきた。
・アントシアニンが豊富
・粒表面が濃い紫〜黒色
・日本各地でわずかに継承されてきた在来の稲
近年は健康志向から再び注目され、地域ブランドとして復興が進んでいる。
🔴 赤米 ― 稲作の源流を示す粒
赤米は、糠層に赤いタンニン色素を多く含む古い系統。 日本に稲作が伝わった当初は、この赤米が主流だったともいわれる。
・粒の外側が赤〜赤褐色
・収穫すると籾全体が赤く染まる
・神社の神饌として受け継がれた地域もある
赤米は稲作史と深く結びつき、 「日本の稲作文化の生きた証拠」として大切に守られてきた。
🟢 緑米 ― 失われかけた希少な系統
緑米は、粒表面が薄い緑色を帯びる希少な古代米。 流通量はわずかで、生産されている地域も限られている。
・淡い緑色が特徴
・粘りが強く、食味に優れているとされる
・在来品種として一部地域にのみ残る
鮮やかではないが、しずかな色を宿した粒は、 古い稲作の多様性を今に伝えてくれている。
🌾 白米への道 ― 多様な色から“白”が選ばれた理由
かつて稲は多くの色をまとっていた。 それが次第に白米が主流になった背景には、 いくつかの理由がある。
・色素が少ないほうが食味が安定しやすい
・精米技術の発達で「白米を好む文化」が広がった
・保存性や調理のしやすさ
しかし、古代米が消えたわけではなく、 地域の祭礼や在来品種の保存活動の中で、 今もひっそりと受け継がれている。
🌙 詩的一行
色を宿した粒が、昔の田んぼの気配をそっと照らす。
コメント