🐟イワシ11:しらすと子の命 ― 小さな季節の風景 ―

イワシシリーズ

― 白い粒のひとつひとつが、海の明日 ―

春から初夏、浜辺に白い光が並ぶ。
それは“しらす”――カタクチイワシなどの稚魚たち。 透き通る体が太陽に反射して、 海の季節が始まるのを知らせてくれる。
人はその小さな命をすくい、塩ゆでにし、風と太陽に預ける。 それは海の時間を少しだけ分けてもらう行為だ。


🌾目次


🌊 稚魚の季節 ― 海辺で育つ命

しらすの時期は短い。 生まれてすぐの稚魚たちは、波打ち際でプランクトンを食べ、 潮の流れに身をまかせて成長する。
春の海は穏やかで、光もやさしい。 小魚たちはその中で泳ぎながら、 次の群れの礎になる。


🌤 しらす干し ― 塩と風と太陽

水揚げされたしらすは、すぐに茹でられる。 白く浮かぶ湯気の向こうで、海の香りが立ちのぼる。 釜揚げ、半干し、全乾―― 乾き方で味も食感も変わる。 塩と風と太陽が、海の甘みをそのまま残す。
それを食べることは、季節を口にすることだ。


⚖️ 漁と倫理 ― 小さな命を受け取る知恵

しらす漁は、地域の決まりによって守られている。 漁期、網の大きさ、時間帯―― すべてが海のリズムに合わせられている。
小さな命をいただくからこそ、 取りすぎないという約束が必要だ。 漁師たちは海の顔を見ながら、 その年の群れの表情で操業を決める。 数字よりも“感覚”が、海を長く支えてきた。

しらすは未来の群れのはじまり。 それを守ることが、海のめぐりを守ることになる。


🌙 詩的一行

白い波の中に、次の季節が泳いでいる。


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