― 白い粒のひとつひとつが、海の明日 ―
春から初夏、浜辺に白い光が並ぶ。
それは“しらす”――カタクチイワシなどの稚魚たち。
透き通る体が太陽に反射して、
海の季節が始まるのを知らせてくれる。
人はその小さな命をすくい、塩ゆでにし、風と太陽に預ける。
それは海の時間を少しだけ分けてもらう行為だ。
🌾目次
🌊 稚魚の季節 ― 海辺で育つ命
しらすの時期は短い。
生まれてすぐの稚魚たちは、波打ち際でプランクトンを食べ、
潮の流れに身をまかせて成長する。
春の海は穏やかで、光もやさしい。
小魚たちはその中で泳ぎながら、
次の群れの礎になる。
🌤 しらす干し ― 塩と風と太陽
水揚げされたしらすは、すぐに茹でられる。
白く浮かぶ湯気の向こうで、海の香りが立ちのぼる。
釜揚げ、半干し、全乾――
乾き方で味も食感も変わる。
塩と風と太陽が、海の甘みをそのまま残す。
それを食べることは、季節を口にすることだ。
⚖️ 漁と倫理 ― 小さな命を受け取る知恵
しらす漁は、地域の決まりによって守られている。
漁期、網の大きさ、時間帯――
すべてが海のリズムに合わせられている。
小さな命をいただくからこそ、
取りすぎないという約束が必要だ。
漁師たちは海の顔を見ながら、
その年の群れの表情で操業を決める。
数字よりも“感覚”が、海を長く支えてきた。
しらすは未来の群れのはじまり。 それを守ることが、海のめぐりを守ることになる。
🌙 詩的一行
白い波の中に、次の季節が泳いでいる。
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