― 海は失われない。群れは、いつか帰ってくる ―
イワシの群れは、ある年には姿を消し、
ある年には海を満たすほど戻ってくる。
人はその変化を“海の呼吸”と呼んだ。
長い時間の中で、海は失われることなく、
静かに再び命を湧かせる。
豊漁も不漁も、終わりではなく循環。 群れが帰るたび、人々は海の力を思い出す。 再生とは、数を取り戻すことではない。 海がもう一度“息をする”こと―― それが本当の豊かさなのだ。
🌾目次
🌊 群れの帰還 ― 海の時間に合わせて ―
マイワシの資源は、数十年周期で変動する。
海の温度、プランクトン、潮の流れ――
それらのわずかな変化が群れの運命を左右する。
だが、減った群れはやがて戻ってくる。
それは人の力ではなく、海自身の再生力によるものだ。
海は失うことを恐れず、 また満たすことを焦らない。 時間の流れの中で、命をゆっくりと繰り返していく。 そのリズムに、人もまた寄り添ってきた。
🌍 気候と海 ― 温度が描く命の地図 ―
イワシは、水温18〜22℃の海を好む。
気候が暖かくなれば北へ、寒くなれば南へと群れが移る。
地球の温度がわずかに変わるだけで、
その海の“中心”も変わっていく。
だから海は、常に動いている。
温暖化が進む現代、 イワシの分布もまた変わりつつある。 それは危機であると同時に、 新しい海の地図が描かれているということ。 命は、変化の中で形を変えながら続いていく。
🍴 人と再生 ― 豊漁の記憶と祈り ―
かつてイワシが戻った年、漁村は光に満ちた。
港が賑わい、干し場が銀色に輝いた。
人々はそれを「海が生き返った」と言った。
その言葉には、命への感謝があった。
豊漁は祝福であり、同時に“再会”でもあった。
海と人の関係は、取る・食べるだけではなく、 待ち、祈り、見守る時間でもある。 群れが帰る季節―― それは、人と海がもう一度つながる季節でもある。
🌙 詩的一行
海は忘れない。群れは、再び光る。
コメント