― 夜の海に灯る、人と魚の言葉 ―
月のない夜、沖の海が淡く光る。
それは、漁師が海に灯す“漁火(いさりび)”。
光に引かれて、プランクトンが集まり、
そのあとを追ってイワシが現れる。
光は、命を呼ぶ合図であり、
人と海が交わす静かな会話でもある。
漁火の下で、網がゆっくりと沈む。 海が光り、魚が反射し、 闇の中に波紋がひとつ、またひとつと生まれていく。 夜の漁は、海と人の呼吸が合う瞬間だ。
🌾目次
🌊 漁火のしくみ ― 光に集う命 ―
イワシ漁に使われる漁火は、
魚が光に反応する性質を利用したものだ。
光のもとに小さな生き物が集まり、
その動きを追って魚が近づく。
海は光で動く――
漁火はその仕組みを、人が学び取った証だ。
昔は松明や灯油ランプ、 今はLEDの光が海を照らす。 道具が変わっても、光の意味は同じ。 それは、海と魚をつなぐ“言葉”である。
🌍 漁師の知恵 ― 海を読む眼 ―
漁師は、潮の匂い、風の音、
そして海面の微かな波を見て群れを探す。
「今日の海は眠っている」「光が立っている」――
そんな言葉で、海の機嫌を読み取る。
イワシは目に見えないところで生きている。
だからこそ、人は海を感じ取るしかない。
漁の技術は、観察と感覚の積み重ねだ。 海と話すようにして魚を見つけ、 光で誘い、網で包み、 その一瞬のために生きる。 それがイワシ漁の美しさでもある。
🍴 光と暮らし ― 夜の海を生きる文化 ―
漁火が見える夜は、海辺の町が少し明るくなる。
子どもたちはその光を数え、
年寄りは「今夜はいい潮だ」とつぶやく。
その光は、海の恵みの予感であり、
暮らしのリズムそのものだった。
夜の海で働く人たちの姿は、 “光の中の影”のように美しい。 漁火はただの灯ではない。 それは、人が海と共に呼吸してきた証なのだ。
🌙 詩的一行
闇の海に灯るのは、命の記憶。
コメント