🐟マグロ8:ビンナガ

マグロシリーズ

― 白い翼を持つ旅人 ―

ビンナガマグロ(鬢長鮪) ― 長く伸びた胸びれが特徴の中型回遊魚。光を受けて白く輝くその姿は、まるで海を飛ぶ鳥のよう。温帯の海を横断し、群れで旅を続ける“空のようなマグロ”。

📘基本情報

  • 分類: スズキ目 サバ科 マグロ属(Thunnus alalunga
  • 英名: Albacore
  • 分布: 世界の温帯外洋域に広く分布。北太平洋では日本近海から北米沖まで。
  • 体長: 最大1.4m
  • 体重: 最大60kg前後
  • 寿命: 約10〜12年
  • 食性: イワシ・サンマ・小型イカ・甲殻類など。
  • 生息環境: 表層〜中層を回遊。やや冷たい温帯域を好む。
  • 漁法: 一本釣り・延縄・トローリングなど。日本では主に太平洋側で漁獲。
  • 保全状況: IUCNレッドリスト:Near Threatened(準絶滅危惧)。地域的に資源変動が見られる。

南から吹く風に乗って、白い翼が海を滑る。
ビンナガ――その胸びれは翼のように長く、
泳ぐというよりも“舞う”ように進む魚。
軽やかで、穏やかで、どこか空を感じさせるマグロだ。


🌱 姿 ― 白い翼

ビンナガの最大の特徴は、その長い胸びれ。
体の半分ほどの長さがあり、泳ぐたびに柔らかく波打つ。
体色は明るい銀青色で、他のマグロよりも透明感がある。
その姿は海というより、空の生き物のようだ。


🌿 行動 ― 穏やかな回遊者

温帯の穏やかな海を好み、単独または小群で回遊する。
クロマグロやキハダほどの速度はないが、
一定のリズムで海を渡る持久力がある。
昼夜の移動は少なく、安定した環境を選ぶ知恵を持つ。


🔥 生態 ― 軽やかな命の設計

体は細く、脂肪が少なく、筋肉はしなやか。
その軽さが、省エネルギーで長距離を泳ぐ力になる。
暖流と寒流の境界を読み取り、
豊かなプランクトンと小魚の層を追って動く。
その動きには、静かな計算と柔らかな適応がある。


⚓ 人との関わり ― 日常のマグロ

日本では「ビンチョウマグロ」と呼ばれ、
ツナ缶やすし店の“ビントロ”として広く親しまれている。
身は白く柔らかく、脂のりも穏やか。
高級魚ではないが、もっとも人に近いマグロとも言える。
そのやさしい味は、海の中の静けさを思わせる。


🌙 詩的一行

風を受けて泳ぐとき、海はひととき空になる。


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