絶滅の淵を越えて、初めて見つかった“白い命”(2025年10月31日)
スペイン南部、アンダルシア地方の山あいにあるアンドゥハル自然公園。
今年、そこに設置された自動カメラが、
世界で初めて「白いイベリアオオヤマネコ」をとらえた。
映像に映るのは、まだ若い個体。
雪のような毛並みをまといながらも、
うっすらと斑点の模様を残している。
その瞳は赤くない――つまり、これはアルビノではなく、
**部分的に色素が欠ける“白変個体(ルーシズム)”**と見られている。
この発見が特別なのは、単に“珍しい色”だからではない。
イベリアオオヤマネコは、わずか20年前まで絶滅寸前だった。
2002年には世界で100頭を下回り、
「地球で最も危機的なネコ」と呼ばれていた。
それが保護活動によって徐々に回復し、
今では1,000頭を超えるまでに戻った。
そして、その中から現れた“白い影”。
それは、個体数が増え、遺伝的多様性が再び広がりはじめた証でもある。
種が回復しなければ、こうした突然変異は見つからない。
白い体は、危うい均衡の中に生まれた希望のかたちだ。
研究者は語る。
「この個体が生き残れるかどうかは分からない。
だが、それを見守れるほどに自然が戻ってきたことが重要だ。」
乾いた草原とオリーブ畑の間で、
イベリアオオヤマネコたちは静かに暮らしている。
その姿は、失われかけた森の記憶を取り戻すようだ。
白い毛並みは、異端ではない。
それは、生き物たちがもう一度“変化する力”を取り戻した証。
絶滅からの回復は、ただ数を増やすことではなく、
多様さを取り戻すことなのだ。
🌏 せいかつ生き物図鑑・世界編
― 変わりゆく地球を見つめる観察記 ―出典:Iberian Lynx Life Project/El País/Times of India/BBC
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