🌍 鯵25:世界の鯵食文化 ― 地中海からアジアへ広がる人気

アジシリーズ

🪸 基本情報

アジは日本人にとっておなじみの魚ですが、
実は世界中の海で愛されているグローバルな魚です。
英語では“horse mackerel(ホースマカレル)”と呼ばれ、
ヨーロッパからアフリカ、アジアの海まで広く分布。
その身近さと旨みから、各国の食文化の中に溶け込んでいます。


🇯🇵 日本 ― 魚を生で、干して、揚げて

日本では、アジは“国民魚”とも言える存在です。
刺身・寿司・塩焼き・干物・フライ……あらゆる形で親しまれています。
特に「アジの開き」は、保存の知恵と気候の恵みが生んだ伝統食。

また、最近では海外でも“AJI”の名が通じるほど、
日本の寿司文化とともにアジが知られるようになっています。
日本では“素材を活かす”調理が中心ですが、
他国では香辛料やオイルを使ったアプローチが主流です。


🇪🇸 スペイン ― オリーブオイルとニンニクの海の香り

地中海沿岸のスペインでは、アジは「カバージョ(Caballa)」と呼ばれ、
オリーブオイル漬けやアヒージョに使われます。

代表的なのが**「カバージョ・アル・ホルノ(鯵のオーブン焼き)」**。
レモンとハーブ、ガーリックを添えて焼き上げる料理で、
シンプルながらも海の香りがぎゅっと凝縮されています。

缶詰文化も発達していて、
アジのオリーブオイル漬けはパンやワインのつまみとして人気。
魚を“保存しながら楽しむ”という点で、日本の干物文化と通じるところがあります。


🇮🇹 イタリア ― 魚とトマトの出会い

イタリアでもアジは広く食べられています。
「スゴンブロ(sgombro)」という呼び名で親しまれ、
特に南イタリアでは**トマト煮込み(スゴンブロ・アッラ・リヴォルノ)**が定番。

トマトとハーブ、白ワインで煮込むことで、
アジの旨みと酸味が調和し、地中海らしい味わいになります。
イタリアでは“脂の多い魚”=エネルギー源という考え方が強く、
アジは家庭の健康食としても重宝されています。


🇵🇭 フィリピン ― 酸味で仕上げる南国の知恵

東南アジアの海でも、アジは定番の魚です。
フィリピンでは「ガルンゴン(galunggong)」と呼ばれ、
家庭料理から屋台まで、あらゆる場面で登場します。

人気なのが**「ピナクベット(酢煮)」「アジのフライ」**。
南国の暑さの中で魚を長持ちさせるために、
お酢や香辛料を使った“酸味の保存法”が発達しました。

その食文化は、かつてスペインの影響を受けた歴史と結びついており、
「海と香辛料が出会う場所」として今も生きています。


🇬🇷 ギリシャ ― オリーブとレモンの国の海料理

ギリシャでもアジは人気の魚で、
「ガヴロス(gavros)」という名で市場に並びます。
グリルやフリット、レモンとオリーブオイルをかける料理が定番。
特に**“新鮮な魚をその場で焼く”**スタイルは、
日本の浜焼き文化にもどこか似ています。

ギリシャの漁師は昔から、
「海風と火とオリーブオイルがあれば魚はうまい」と言います。
この言葉には、海辺の暮らしと調理の哲学が込められています。


🌏 海がつなぐ文化

どの国でも共通しているのは、
**アジが“海の近くで暮らす人々の味”**であること。
高級ではなく、日常の中にある魚。
その身近さこそが、文化を超えて愛される理由です。

日本では“旨みを生かす”料理、
地中海では“香りで包む”料理、
アジアでは“酸味で守る”料理。
海の向こうでも、アジはそれぞれの土地で形を変えながら生き続けています。


🧠 まとめ ― 世界に泳ぐ「AJI」の名前

アジは、単なる魚ではなく、海洋文化の共通言語
日本の港から地中海の漁村まで、
その名を知らない人はいないほど親しまれています。

食べ方は違っても、
「海の恵みを大切にする」という想いは世界共通。
銀色の体に宿るその輝きは、
人と海をつなぐ“食の架け橋”として今日も泳ぎ続けています。

次回は「鯵26:鯵の養殖と環境問題 ― 安定供給の裏側」で、
現代の漁業とサステナブルな食の未来を見ていきます。

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