痛みは遅れてやってくる。森が覚えているかぎり。
分類:担子菌類 ハラタケ目 ドクササコ科
学名:Podostroma cornu-damae
分布:日本(本州〜九州)、東アジアの一部山地林
発生時期:夏〜秋
大きさ:高さ2〜8cm前後
毒性:猛毒(遅発性中毒・皮膚壊死・手足の激痛)
主な毒成分:トリコテセン系毒(サトラトキシン、ベリトキシンなど)
食用/毒性:毒(極めて危険・食用不可)
森の奥、湿った落ち葉の間に、
赤黒い角のようなものが生えている。
枝でも花でもなく、
それは森の“罰”の形をしている。
ドクササコ。
触れただけでは何も起きない。
けれど、森は覚えている。
時間を置いて、
ゆっくりと痛みを送り返してくる。
🩸 時間を使う毒
このきのこの毒は、
摂取後数日たってから発症する。
痛みが遅れてやってくるのだ。
指先から焼けるように痛み、
皮膚が剥がれ、感覚が失われる。
それは、森が“時間”を通して人を罰しているよう。
触れた瞬間ではなく、
森を離れたあとに、
その報いを受ける。
まるで、森の記憶そのものが、
人の体に宿るように。
🌑 森の呪いの形
ドクササコの形は不思議だ。
角のようでもあり、
燃え尽きた木の枝のようでもある。
その姿は、まるで森が怒りを固めたもの。
けれど、そこには意思がある。
“これ以上踏み込むな”という、
森の最後の結界のような存在。
森の怒りは派手ではない。
静かに、確実に、
痛みを残す。
🕯 人の罪、森の記憶
この毒は、人を選ばない。
知識のある者も、無知な者も。
だが、森は覚えている。
誰が木を切り、
誰が土を荒らしたかを。
その記憶の上に、
ドクササコは咲く。
それは森の呪いではなく、
“記録”なのかもしれない。
✨詩的一行
森の罰は静かだ。
それゆえに、永く痛む。

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