🍄あとがき ― 森の声を聴くということ

山を歩くと、足元にたくさんの命がある。
でも、ほとんどは気づかれないまま、
踏まれ、雨に溶け、また土に戻っていく。

きのこもそのひとつだ。
派手な花のように咲くわけでもなく、
光を求めるわけでもない。
ただ、見えないところで森を支え、
命をつなぎ、世界を静かに保っている。


この本で描いたのは、
「きのこ」という形を借りた、命の循環の物語。
生きることと、朽ちること。
食べることと、祈ること。
そのあいだには、
いつも小さな胞子のような希望がある。

きのこを食べるとき、
私たちは森の時間を少しだけ分けてもらっている。
その香り、歯ざわり、そして余韻――
それらのすべてが、
人の記憶と森の記憶を重ね合わせている。


菌は、見えないところで世界を動かしている。
人の暮らしもまた、
見えない支えによって保たれている。
もしこの本が、
そんな“見えないつながり”を感じるきっかけになれたなら、
それがいちばんの喜びだ。

森を歩くように、
このページをめくってくれたあなたへ。
ありがとう。


✨詩的一行

森は沈黙のまま、
それでも語り続けている。

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