闇が深いほど、命の光はやさしくなる。
夜の森を歩くと、
足元がかすかに光っていることがある。
朽ちた木の割れ目や落ち葉の裏、
そこに淡い緑の灯が浮かんでいる。
それは“光る菌”。
ヒカリタケ、シイノトモシビタケ、ヤコウタケ。
菌糸やきのこの表面が、
夜の湿気を吸って発光している。
人の目には小さな光。
けれど森にとっては、
命がまだ生きていることを示す“呼吸の色”だ。
🌌 闇の中の記憶
森の夜は、
真の闇ではない。
目に見えない生命の光が、
絶えずどこかで灯っている。
光るきのこは、
森の記憶を静かに保存している存在。
朽ちた木の中に残る栄養、
雨のあとに沁み込んだ空気、
それらを発酵させ、微かに発光させる。
その光は、森が自分の存在を確かめるための
“まばたき”のようなものだ。
🌿 光と記憶の関係
人にとっても、
光は記憶の象徴だ。
暗闇の中で思い出す顔や声は、
遠い光のように浮かび上がる。
きのこの光を見ると、
忘れていた感情が静かに戻ってくる。
それは懐かしさではなく、
“命がまだ続いている”という感覚。
森も人も、
同じ闇の中で光を見つけようとしている。
🌾 科学と詩のあいだで
発光菌は、
酵素と物質が反応して光を生む。
けれど、その科学の奥にも、
詩のような意味がある。
森は死を隠さない。
朽ちた木の中で、
菌たちが光を灯す。
それは“終わり”を“輝き”に変えるための小さな魔法。
自然が行う、もっとも静かな祈りだ。
✨詩的一行
闇の中で光るものは、
いつも記憶のかけら。
 
  
  
  
  
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