分類:ハラタケ目 シイタケ科 シイタケ属
学名:Lentinula edodes
分布:日本・中国・韓国など東アジアの広葉樹林
発生環境:クヌギ、コナラなどの倒木や原木に発生(腐生菌)
傘径:5〜12cm前後
食性:枯木を分解して養分とする
🌳外見と生態
森の中で、木が静かに倒れる。
風の音も止み、湿った空気が根元にたまる頃、
その木の表面に、白い糸のようなものが忍び寄ってくる。
それがシイタケの菌糸。
目には見えないけれど、確かに生きている。
やがて数か月、あるいは数年が経ち、
森に雨が戻る季節になると、
原木の割れ目から茶色い傘がゆっくりと顔を出す。
ひだの裏には、木が運んできた栄養と時間が詰まっている。
それはまるで、倒木がもう一度息をするようだ。
シイタケは木の終わりを受け取り、
別の命として生まれ直す。
枯れることと生まれることの境界で、
このきのこは静かに呼吸している。
🍽️人との関わり
「しいたけ」という名は、
そのきのこが“椎(しい)の木”に生えることからついた。
日本では古くから食され、
平安の頃にはすでに文献にその名が記されている。
干しシイタケの香りは、
長い時間を閉じ込めた森の記憶そのものだ。
乾燥の過程でうま味が凝縮され、
戻すとき、香りがふわりと立ちのぼる。
それは森が一度失った水を、
もう一度吸い上げて息を吹き返す瞬間でもある。
祖母の家の台所では、
軒下に干されたシイタケが陽を透かしていた。
風に揺れるその姿を見ていると、
木漏れ日が布団のようにかかっているようで、
冬の寒さの中でも不思議とあたたかかった。
原木栽培は今も日本各地で続いている。
一本のクヌギに種駒を打ち込み、
森の中で雨と光と菌の時間を待つ。
人は育てているようでいて、
実のところ、森の循環にほんの少し寄り添っているだけなのかもしれない。
🌾文化と象徴
シイタケは「香り松茸、味しめじ」と並び称されるほど、
和食の香りを代表する存在になった。
だし文化の根底にあるのは、この香り。
昆布や鰹節のうま味と混ざりあうとき、
それはまるで森と海がひとつになる瞬間のようだ。
海外では“shiitake”として通じるほど、
日本発の食文化として定着している。
菌という目に見えない存在が、
人と森、そして世界をゆるやかに結んでいく。
✨詩的一行
倒木の記憶が、傘の内側で香る。
その香りを吸い込むとき、森の声が少し近くなる。

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