― 森が覚えていること ―
🗂目次
分類:哺乳綱 クマ科
生息環境:森林・山岳地帯
主題:痕跡・記憶・自然の時間
象徴:継承・沈黙・再生・存在の証
関連語:爪跡,足跡,木登り,森,記憶
🌲爪の跡が語るもの
古いブナの幹に、
斜めの爪跡が刻まれている。
深く抉れたその線は、
十年以上の風雪にも消えずに残っていた。
爪の跡は、熊の記録であり、
森の年輪の一部でもある。
春ごとに登り、実を食べ、
夏に子を連れて戻り、
そしてまた去っていく。
それを見上げる木々は、
静かにその「通り道」を覚えている。
🍂土と匂いの記憶
倒木の根元を掘り返す跡。
そこには蟻、ミミズ、湿った土。
熊は、匂いで世界を読む。
嗅覚で季節を感じ、
足の裏で地面の柔らかさを測る。
その行動の一つひとつが、
森の中に“熊の時間”を残していく。
やがて雨が降り、
跡は消える。
けれど、土の奥に、
その匂いはしばらく残る。
森は、忘れない。
🪶人の記憶の中の熊
人の記憶にも、
熊の痕跡が残っている。
古い山道の言い伝え、
狩人が見た影、
春の雪に残った足跡の話。
「この沢には昔、熊がいた」
そんな言葉が、
いまも小さな集落の口にのぼる。
それは、
森と人がまだ近かった時代の、
記憶の名残。
🌌森は忘れない
木は立ち続け、
雨は降り、
風が同じ匂いを運ぶ。
人がいなくなっても、
熊は森を歩き、
森は熊の道を覚えている。
記憶とは、
ただ心にあるものではなく、
風景の中に刻まれるもの。
熊が生きた時間は、
森の中でいまも続いている。
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