🐟鮭20:光の中で ― 永遠の流れ ―

サケシリーズ

― 光は、すべてを包みこむ ―

水が静まり、風が止む。

その瞬間、世界は光の中に沈む。

鮭の旅は終わり、そして始まりへと還っていく。

☀️ 光の記憶

朝の川に光が差し込む。 その粒は、まるで小さな命の残響のように揺れている。 流れの底では、孵化した稚魚が水を感じ、 空を知らぬままに、光の方向を覚えていく。 鮭の旅は、いつも光とともに始まり、光のもとに帰る。

光は記憶だ。 それは水面に映る時間の形であり、 命が生まれ、還るたびに残る“ぬくもり”。 誰のものでもないけれど、 確かにすべての命を照らしている。

💫 命の輪

鮭の生涯は円を描く。 生まれた場所へ戻り、命を渡して終える。 その姿は、時間を超えて続く“輪”そのもの。 命は直線ではなく、何度も巡りながら形を変えていく。 その循環の中に、私たちもまた生かされている。

誰かが去り、誰かが生まれる。 その交差点で、川は静かに流れを変える。 すべてがつながり、すべてが戻ってくる。 それが、世界のやさしさなのかもしれない。

🌊 海と空のあいだ

海の上を鳥が飛ぶ。 その影が波に触れ、光が揺れる。 そこにはもう境界はない。 海も空も、川も命も、ひとつに溶けている。 鮭の記憶は水に混じり、雲になり、 やがて雨となって再び川へと帰る。

そうして世界は呼吸している。 海が息を吐き、山が吸い込み、 命はその間をめぐる。 終わりも始まりも、もう区別がない。 あるのはただ、流れだけ。

🌌 永遠の流れ

夕暮れ、海は金色に染まり、 空の端がゆっくりと淡い群青に変わる。 その境界に立つと、時間の音が消える。 光が静かに降り、世界は一つの呼吸になる。 鮭の旅も、人の旅も、同じ流れの中にある。

永遠とは、止まることではなく、 絶えず変わりながら続いていくこと。 命は光へと還り、また誰かの中で目を覚ます。 ――そしてまた、流れ出すのだ。 海をめぐり、川をのぼり、光へと帰るために。


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